女たちよ!

ご存じ伊丹十三さんのエッセイ。これいつ読んだのかしら。
これを皮切りに伊勢市立図書館で書庫から伊丹さんの本を借りまくっていた時代がありました。(私の好きな作家のは大体書庫にあるんだよ。表にだしておいたらよいのに!)

「ごく贅沢に育てられ気品が匂うがごとくで、エロチックな肢体をもっていながら貧乏を恐れず、いつも愛らしい顔立ちが魅力的でバロック音楽が好きでアンマがうまく、天涯孤独か美しい姉妹がいるかのどちらかで、たとえばルーの下着、エルメスのハンドバッグ、シャルル・ジョルダンの靴を愛用し、かつ牛肉の大和煮に弱く、サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』が一番好きな小説で、猫が大好きな私より二まわり年下で、伊丹十三が世界で一番えらいと思っている女性、私、そういう配偶者を求めております。」
という感じの広告まで最後につけて、世の女性たちを怒らせて話題になったそうですがそのあと結婚したのが宮本信子さんってことで丸くおさまるという。
信子さんすげえ。かわいいもんね。
女性のことに触れているのはじつは ごくわずか。「犬の歯を抜くにはあつあつのふろふき大根をかませ」たらいいとほらをふき、シャルル・ジュールダンの靴のバランスの素晴らしさを語り、外国人のうなじと日本人のうなじの終点のちがいなど私にとってはおもしろすぎる考察だらけ。氏の描いたイラストもとてもしゃれている。ブルジョワめ!と怒りながらも若い世代に伝えたいことがたくさん書かれている。美意識の塊で鼻もちならない!と思う人もいるかもしれないけれど、なんていうのか、かわいいのだ。夢見る頃は終わってもいまだに女性にはかなく憧れるミスタージューゾーイタミ!無法松の一生を撮った父、伊丹万作についての記述もうれしい。まちがってもいい年頃になった女性が美味しい食事をごちそうになっているときに「あたしジュース!!」なんていってはだめだよ、男性をがっかりさせないでおくれ、少しだけお酒もなめてみて、あとはお水や出してもらったお茶をのみなさい、なんて素敵な叔父様に教えてもらっているような気持ちです。
続編「再び女たちよ!」もあります。

Maki Kawano

illustration / drawing Ise Mie Japan

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