love

パパがいなくなって100日こえた

愛するということ
それ以外できない
それだけはできる

道は一本長く続いているような気がした


慟哭する瞬間はいくつもあったけれど
パパという自然のその勢いは通り過ぎ
その後に残された私はまだ
生きてる限り父を愛することができるやん
これは何らかの慈悲やんと
初めての感覚で世界を見ている


死ぬということは一旦は愛の確定、
私は強くenterkeyを押した気分だ

憎しみで確定する人もいるだろう
押せないままの人も多くいるだろう

私は幸運だったと思う


ひとりでお家で椅子に座って春の夕暮れに去ったパパ
見つけたお兄ちゃん
どんなに怖かったか悲しかったか 全部背負ってくれた

人工呼吸までしてくれた義理のおねえちゃん
大好きなじーじの葬式でおとなしく座って立派に親戚の前で
挨拶もできた甥っ子たち

一滴の涙もこぼさず来る人全員を笑顔で迎えたママ
みんなありがと最高


パパが亡くなって一度もほかのことで傷つくことはなく

葬儀会社も親戚も友達もみんなどこまでも優しかった
パパの残してくれたものはそういうものだった


シリアスなことが苦手で誰のお葬式でもにこにこしてしまい

よくママに怒られていたけど

そんなパパのお葬式ではいい大人の男たちが震えながら泣いていて

みんなが撫でていくものだからパパはオールバックで去っていった
立ち見の完全ソールドアウト長い長い焼香の列

人たらしのパパのお葬式はなんだか悲しいのに陽気な気配が消えなかった
みんなでキスの嵐をふらせてさよならまたねだいじょうぶちゃんとあいしてる


パパの発明したシステムは今も世界中で動いていて
そのシステムで作ったものはこれからもあなたにも私のもとにも届くだろう
小さいパパがあちこちにいる

最後にその仕事の不具合を頼み込まれて直すことになって
実験を成功させて数日後にあっさりと死んだパパ

世界最高峰の技術者のまま死んだ。ああかっこよ!

搬送された病院でパパの鞄を手に慌てて走るわたしを止めるように
クイっと後ろから鞄が確かに引っ張られた

あれは絶対パパだった

パパが後ろにいてくれたら私はなんも怖くない
がんばります見ててです









Maki Kawano

illustration / drawing Ise Mie Japan

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