立春

前のマンションを出て家の塗装をコツコツ進めているけど

古いものが好きと言いながらふたを開けてみれば
結構な古さにだんだん病んでくるへなちょこぶり
ゼイゼイしたりふるふるしたり

ひび  ひびが過ぎる

最後の片づけの日はマンションの風が強くてドアが開かず
寒い寒いと泣きそうになりながら荷物を何度も何度も運ぶけど
なんも終わらずうぇうぇ言いながら
絵の具のついた床を6畳分薬剤で落とさなあかんけどあと10分で立ち合いやん
無理やん

したら電話が鳴って立ち合いの方から

今日何時でしたっけ?とぽんちな電話がかかってきて
「い、一番遅い時間にしてもらってますが!!!」とうそを言って

指を溶かしながら床を拭ききったのでした。

立ち合いに来たおじさまは偶然にも昔からよく知る方で

二人であー!!となってキャッキャして立ち合いもスムーズに済んで

記念写真までとってなんとかマンションを出られた。


世話になったほかのマンションの住人たちに
会いたかったなあと思ってトランクに荷物を詰め込んでいたら
目の前に車がつけられ、上の階に住む後輩がま~きさーん!!!
と現れたので焼肉で〆たけど、15年住んだ部屋を出るのは
ほんとに気持ちも身体も大変だったな。


ありがとう 祖母のいなくなった部屋で泣きながら拭き掃除をしていた私に

「悔いたらあかん、あんたはようやった!」と言ってくれたおばちゃん
ありがとう、私と分かっていながら決して話しかけてこなかった新興宗教にはまったもと親友のお父さん、ありがとう、となりの仲良しのお母さんと娘さん
ありがとう上の階の後輩 
そして寒すぎて新居にいけず私を未だにお泊りさせてくれている実家!ありがとう!
ソウマッチシングストゥセイライナウ。
ばあちゃんから遅れること数年
私もついに愛と涙でまんたんの日々をいったん区切ることにした

阿呆が過ぎる日々を続けよう その前にちょっと休も

Maki Kawano

illustration / drawing Ise Mie Japan

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